ワキの多汗症とは
ワキの多汗症とは、気温や運動量にかかわらず、ワキに過剰な汗が出て日常生活に支障をきたす状態です。医学的には原発性腋窩多汗症と呼ばれます。
「汗ジミが気になって服の色を選べない」「人前で腕を上げにくい」「仕事中や学校生活で汗が気になる」など、生活の質に大きく影響することがあります。
多汗症は単なる“汗かき”とは異なり、診断基準に基づいて治療を検討できる疾患です。日本皮膚科学会のガイドラインでも、原発性局所多汗症は日常生活に支障をきたす状態として定義され、部位や重症度に応じた治療が示されています。
原因
原発性腋窩多汗症のはっきりした原因は、まだ完全には解明されていません。
汗は主にエクリン汗腺から分泌され、自律神経の一種である交感神経の働きによって調節されています。原発性多汗症では、この発汗の調節が過敏になっていると考えられています。
一方で、次のような病気や薬剤が原因で汗が増えることもあります。
・甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患
・感染症
・神経疾患
・更年期に伴う発汗
・薬剤の影響
・悪性腫瘍などに伴う発汗
そのため、必要に応じて問診や診察を行い、原発性の多汗症なのか、他の病気に伴う汗なのかを確認することが大切です。ガイドラインでも、多汗症は原発性と続発性に分類され、基礎疾患の有無を確認する流れが示されています。
主な症状
ワキの多汗症では、次のような症状がみられます。
・ワキ汗の量が多い
・服に汗ジミができやすい
・汗が気になって服の色や素材を選んでしまう
・人前で腕を上げにくい
・緊張するとさらに汗が増える
・制汗剤だけでは十分に抑えられない
・汗による皮膚のかぶれやかゆみがある
・汗やにおいが気になり、仕事・学校・対人関係に支障がある
ワキの多汗症は、ワキガ(腋臭症)とは異なる疾患です。多汗症は汗の量が主な問題で、ワキガはアポクリン汗腺などが関係するにおいが主な問題です。ただし、汗の量が多いことでにおいが気になりやすくなることもあります。
受診の目安
次のような場合は、一度ご相談ください。
・ワキ汗が多く、日常生活に支障がある
・汗ジミが気になり、服装を制限している
・市販の制汗剤で十分な改善が得られない
・学校、仕事、人前での活動に影響している
・汗による皮膚トラブルがある
・多汗症の保険診療について相談したい
・ボツリヌストキシン療法の適応があるか知りたい
「汗の悩みで受診してよいのか」と迷われる方も少なくありませんが、多汗症は医療機関で相談できる疾患です。
当院で行う治療
当院では、診察で症状や重症度を確認したうえで、保険診療を中心に治療を検討します。治療は、患者さんの生活への支障、重症度、希望、既往歴などをふまえて選択します。
生活指導・スキンケア
汗によるかぶれや湿疹がある場合は、まず皮膚の状態を整えることも大切です。
通気性のよい衣類、汗を吸いやすいインナー、肌への刺激が少ない制汗剤の使い方なども、必要に応じてご説明します。
外用薬による治療
原発性腋窩多汗症には、保険診療で使用できる外用薬があります。
代表的な薬剤には、ソフピロニウム臭化物ゲルやグリコピロニウムトシル酸塩水和物ワイプ製剤などがあります。これらは、汗腺に関わる神経伝達を抑えることで、ワキの発汗を抑えることを目的とした治療です。
エクロックゲル5%はPMDA添付文書上、効能・効果が「原発性腋窩多汗症」で、1日1回腋窩へ塗布する薬剤です。
ラピフォートワイプ2.5%も「原発性腋窩多汗症」に対し、1日1回、1包の不織布で両腋窩へ塗布する薬剤として記載されています。
外用薬は比較的始めやすい治療ですが、目に入ると散瞳やかすみ目などが起こることがあるため、使用後の手洗いなどが大切です。また、閉塞隅角緑内障や排尿障害のある方では使用に注意が必要です。
ボツリヌストキシン療法
症状が重い、もしくは毎日塗り薬を塗るのが大変、忘れてしまうという方にはボツリヌストキシン療法が選択肢になることがあります。
ボツリヌストキシン療法は、ワキの皮内に薬剤を注射し、汗を出す神経の働きを一時的に抑える治療で、エクリン腺から分泌される汗の量を抑えます。ワキの多汗症だけでなく、ワキガの方の症状も軽くなります。日本皮膚科学会のガイドラインでは、腋窩多汗症に対するA型ボツリヌス毒素の局所投与について有用性が示されております。
注射後2~3日後から1週間の時間をかけて効果が現れ、その効果は4~6ヶ月持続します。
当院ではボツリヌストキシン療法は自費診療となります。
治療後の注意点
外用薬を使用する場合
外用薬は、医師の指示に従って使用してください。
使用時には次の点に注意が必要です。
・目に入らないようにする
・使用後に手へ薬剤が付着した場合は手を洗う
・傷、湿疹、かぶれが強い部位には自己判断で使用しない
・かすみ目、まぶしさ、口の渇き、排尿しにくさなどがあれば相談する
・高温環境や運動時には体温上昇・熱中症に注意する
ボツリヌス療法を受けた場合
注射部位に赤み、腫れ、内出血、痛みが出ることがあります。多くは一時的ですが、気になる症状が続く場合はご相談ください。
処置当日は、注射部位を強くこすったり、長時間の入浴、激しい運動、過度な飲酒などは控えていただくことがあります。詳しい注意点は処置時にご説明します。
WEB予約のご案内
ワキ汗が多い、汗ジミが気になる、制汗剤で十分に改善しないなどのお悩みがある方は、まずは診察でご相談ください。
当院では、症状や重症度を確認したうえで、保険診療を中心に適した治療法をご提案します。外用薬の処方は診察当日に可能です。ボツリヌス療法についても、基本的に診察当日に可能ですが、薬剤の在庫、予約状況によっては後日のご案内となることがあります。
ご希望の方は、LINE、WEB予約より「形成外科・皮膚科のご予約」よりご予約ください。